健康栄養学科

ゼミ研究・活動

"無塩"米粉100%パンにチャレンジ⁉

 大場研究室では、「小麦、卵、乳アレルギーがある児童でも皆と同じ給食が食べられる機会を増やせないか?」というねらいで「小麦、卵、乳を使わない給食レシピ」を本学オープンキャンパスでの弁当提供を通して検討しています。

 昨年の先輩は、試行錯誤の末、大量調理での米粉100%パンレシピを完成させ、お弁当の主食として米粉100%パンを提供しました。好評でしたが、米粉独特の表面が硬くなりやすい点やもちもち感の軽減も課題であり改良がまだまだ必要です。そこで、私たちは食感の改良に加え、「米粉パンに塩の添加は必要か?」について検討してみたいと考えています。

20200515 大場研究室.png

 栄養教諭の先生から「ごはんが主食の献立より、パンを主食とする献立では"パン自体の塩分が高く"学校給食摂取基準値内の食塩量にするのに苦労している」と聞きました。

 小麦粉を使ったパンの場合、捏ねの操作によってできるグルテンの網目構造がパンの膨らみには欠かせません。そのとき、塩がグルテン形成を促すので塩が必要です。

 しかし、米粉100%パンの膨らみにはグルテンは関係しないため、必ずしも「塩」を添加しなくてもよいのでは?という発想です。白飯が他のおかずの引き立て役であるように"無塩米粉100%パン"がもしできれば、他のおかずの引き立て役&アレルギー児童も食べられる&給食献立の減塩につながるのでは?!一石三鳥ねらいます!(大場研究室)

飲み込みがうまくできない人が安全においしく食べるためのお手伝い

 伊藤研究室では、嚥下困難者に対する餅菓子の提案を行いました。高齢になると嚥下機能が低下し、健常者と同じ食事を楽しく食べることは難しくなります。その中でもお餅は、高齢者が好む食品ですが、粘着性と弾力性があるため口の中に貼りつきやすく飲み込みにくいため事故が多発しています。そこで、高齢者が安全においしく食べることができるお餅を作りたいと考えました。まず始めに私たちが普段食べている硬さのもち菓子を作り、そこから試作を重ねていきました。試作では、ゲル化剤やとろみ調整食品を使い粉の分量や水の量、加熱時間を調節し理想とする硬さになるように改良していきました。完成したものを実際に嚥下機能が低下した方に試食していただきました。その結果、飲み込みやすさ、見た目、味ともに良い評価をいただくことができました。

 今後の課題として、今回は4人分など少人数で試作を行いましたが、施設などでも使えるように大量調理への展開を考えていきたいと思います。(伊藤研究室)

20200203 伊藤研.png

食品の安全を守る

 健康栄養学科では栄養学はもとより食品に関わるさまざまなことを学びます。

 その中で、臼井研究室では食品の安全に関する研究を行っています。 今年の卒業研究のひとつを紹介します。「ジェットタオル」の研究です。

 手洗い後にジェットタオルで手を乾かすと、時々顔に水滴がかかります。そこで、ジェットタオルを使うとき、①水滴はどれほど飛ぶのか、②手に付着していた細菌が水滴と一緒に飛ばないのか などについて4年生の学生たちが研究しました。

 大学構内にあるジェットタオルを使用し実験をしました。小さな、そして簡単な構造のジェットタオルです。実験は、ジェットタオルの中に手を入れて稼働させながら、同時に色絵具を噴霧しその飛散範囲を調べました。その結果、ジェットタオル周辺の上下左右およそ1mに絵の具が飛び散りました。また、顔や服にも絵の具が付着しました。実はこの実験、かなり大掛かりで準備が大変でした。壁に模造紙を張り、その上で不織布製のつなぎの服、フェイスマスクを装着して実験をしました。

20190129 臼井研究室紹介.jpg

 

 次に、どのような細菌が飛散しているのかを推定するため、ジェットタオル自体に付着している細菌の検査をしました。その結果、黄色ブドウ球菌がジェットタオルの機械から検出されました。黄色ブドウ球菌は人の手指に生息し、食中毒を起こす菌です。手に生息していた黄色ブドウ球菌が飛び散って、ジェットタオルを汚染したと推定されます。前述の実験と考え合わせると、少なくとも周辺およそ1mに黄色ブドウ球菌が飛び散っている可能性があるということになります。

 これらの実験結果をもとに、厨房内ではジェットタオルを使用しない方がよいと結論しました。もちろん、ジェットタオルの構造によって実験結果は変わる可能性があります。

 研究というと「難しい」と思いがちですが、自分が関心を持つことをどうしたら明らかにできるかを考える、とても楽しい作業なのです。(臼井研究室)

小麦・卵・乳を含まないオープンキャンパスランチ提供

 本学では高校生が来学するオープンキャンパスで、4年生が作るランチを提供しています。2019年度は、昨年度「小麦・卵・乳を含まないランチ」を提供した後の課題を踏まえ、献立やレシピ内容を何度も試作を重ねて改良し、以下のようなランチを提供しました。

 5月19日にはパン粉の代替えとして生おからを乾燥させた乾燥おからパン粉を用いた鯵の香草パン粉焼きを、6月30日には通常のルウを使わず溶き米粉でとろみをつけたカレーを、7月28日には米粉と冷凍長芋とろろで作った衣で揚げたイカの磯部揚げ・紅生姜揚げを、8月18日には米粉100%パンを含むランチを提供しました。喫食者のアンケートでは9割以上の方に美味しいと言っていただけましたが、新たな課題も見つかりました。

 次年度もアレルギーの有無に関わらず、皆同じ給食が食べられる機会を増やすためのレシピ検討を継続していきます(大場研究室)。

2019OCランチ.png

まだまだ野菜が足りていない!?

 令和元年からだ改善プロジェクト第6回目を実施しました。9月に実施した個別指導や今までの血液検査の結果から、朝食で野菜摂取を増やす必要があると考えられました。そこで、朝食で野菜を摂れるような献立と、フレンチトーストの作り方をフライパン、グリル、電子レンジの種類別に提案し、ご家庭にあった調理法を選択していただけるようにしました。それに関連して、野菜をたくさん食べるための調理工夫やお正月の過ごし方について資料を作成して説明しました。

 調理実習では、忙しい朝でも手軽に野菜摂取できるポイントを伝えながら、実習しました。また、参加者の方からは「野菜料理のレパートリーが増えた。」「食品の組み合わせを考えるようになった。」という意見がありました。一方、「自分は適塩に慣れたが、家族には薄いといわれてしまう。」という意見もありました。集団指導を通して参加者個人の家族にも反映させることの大切さが分かるとともに、とても難しい課題だと感じました。

 今回で私たちが関わる食事指導は最後でしたが、回数を重ねていく中で会話が弾んだり、気軽に質問をしてくださる参加者の方が多くなっていき参加者の方との距離が縮まっていったことをうれしく思いました。その反面、自分たちの知識不足や指導する立場としてのコミュニケーション能力の未熟さを実感しました。この6回にわたるからだ改善プロジェクトを通して少しずつ成長することができました。この経験を生かし、社会で活躍できるよう努力していきたいと思います。(笠井研 今井 茜)

20191225 からだ改善プロジェクト.png