農業研究会活動
稲から学んだ教師力 ~稲刈り~
9月20日、農業研究会の学生の稲の収穫を行った。
研究会では、将来教師・管理栄養士・親になったときに生かせる学びを得ようと日々活動している。
9月10日に田んぼの半面の稲を収穫し、はさがけまで行ったが、乾燥しすぎてしまい、米の水分量が11%になってしまった。最適な水分量は約14%であるので、米の品質が下がってしまった。前回の収穫では反省点が残った。
この失敗を今回の収穫ではしてしまわないよう、反省点を生かして残り半面の収穫に取り組んだ。予定では3日後の収穫(台風の影響があれば8日後)の収穫を考えていたが、稲の成長と台風の影響を考慮し、早めの収穫にした。
自然に合わせて自分たちが動かなければいけないことを実感し、いつも口にしている食料は、このように自然に合わせて農家の方が働いてくださっているからあるということを学び、これをしっかり子ども達にも伝えていきたいと感じた。
さらに環境に合わせて対応するという点は教師になったときの様々な対応と重なるところがあると考えた。その時の出来事に瞬時に対応していくことは教育現場でも同じであるので、臨機応変に動けるようになりたいと痛感した。
今後の脱穀や籾摺りなどの活動でもその時に応じた動きが取れるよう心掛け、さらなる学びを得ていけるよう励んでいこうと思う。
学校教育専修2年 大橋春奈(静岡県立静岡東高等学校出身)
豊年エビ大量 発見!~先輩から受け継いだ農法で田植え~
4月30日に播種を行った苗も、ようやく11cmの大きさまで成長しました。順調に芽出しができ、すくすくと大きくなった苗に対し、日光や水を与えるタイミングを誤り、一部の苗を枯れさせてしまった思わぬ状況に涙しました。苗は私たちにとって、ただの植物ではなく、育てている子どものような存在です。
▼枯らしてしまった苗から学んだことをクラスに置き換え▼
苗:ミュージカルや部活で忙しくてもこまめな水やり、観察が必要
→クラス:他の仕事より何より子どもが一番優先、細かいところにも気を配って子どもを見る、守る
苗:資料に書いてあることだけではダメ、その年の気候に合わせる
→クラス:毎年同じ子どもではないから、同じ方針で学級経営できるわけではない、問題解決できるわけではない
そうしたことを再確認し、教員となる日を夢見ながら愛情をもってこまめに世話をしました。ようやく今日5月25日に田植えを迎えることができ、水田に植えられるまでに成長した苗には、「育ってくれてありがとう」と胸が熱くなります。これからは水の管理を丁寧に行い、苗の成長を見守ります。
また、透明で朱色の尾をもち、仰向けで泳ぐホウネンエビをたくさん見つけました。別名タキンギョ(田金魚)やナエキンギョ(苗金魚)とも呼ばれ、ホウネンエビ(豊年蝦)が大量発生する年は、豊作になると伝承されています。
お腹に卵を保持したホウネンエビも多数見られ、他にも、5mm程のオタマジャクシ、2cm程のゲンゴロウ、水グモ、アメンボ、イトトンボ、お掃除屋のガムシの幼虫など様々な生き物の姿がありました。
これらも生き物の姿が見られるのも、周囲の機械を使用している水田と比較して見ても、私たちの水田のみです。これまで機械を入れずに手作業で稲作を進めた、先輩方の苦労が実を結んだ気がして、とても嬉しく感じました。
そして、私たちが高校生だった時に、生物の授業で唾液腺を調べた染色体の実験で懐かしい、ユスリカ幼虫も見られました。これらは、クモ類が捕食し成長の大きな助けになると言われています。稲作では、殺虫剤を散布して水稲害虫を防ぎますが、もともとこれら害虫はクモ類が捕食します。こうした食物連鎖を学び、生態系を整え、農薬を使わない方法もあります。私たちはこれからも、栄養あるお米作りに励んでいきたいと思います。
農業研究会幹部2年 伊澤知織(静岡県立韮山高等学校出身)
〈手作業での代掻きを重ねた水田〉
〈ホウネンエビ〉
〈横縄植による田植え〉
生きるための学び~代掻き~
私達が、これから親や教師として子ども達と接する中で、「食」について伝える場面はとても多いはずです。そんな時、「食べ物の命や大切さ」「農家さんが苦労して作っている事」など、誰にでも言える情報では子ども達の印象には残りません。印象的で且つ、生活や学習に活かせるようにするには、教える自分達が実際に身体を使い学修することで、子ども達に『生きた知識』を伝えられると考えました。その学修の1つとして、稲作活動を行なっています。
4月27日に、18人のメンバーで大学付近の水田にて、代掻きを行いました。
朝早くからの活動でしたが、全員で代掻きを行う理由を確認し、来て下さった先輩方から、アドバイスをいただきました。そのお陰で、「いつも触れる土」と「水を含んだ土」の感触の違いに驚き、「どうしてクモは水の上を歩けるのか」や「表面の泡みたいなものは何だろう」などの疑問を持つ事が出来ました。メンバー一人ひとりが、今日の活動を通して、自分なりの学びを発見出来たと思います。
今回代掻きを行なった効果として、今後の田植えがしやすく、稲の発育が良くなることだけではありません。それぞれが抱いた疑問や発見を共有したり調べたりする事により、学びがより一層深まります。そして、自分にしかない『知識』という武器を蓄えることが出来ます。
これから数多くの経験を積み、疑問を知識にする事が出来る活動を全員で創り上げて行きたいと思います。
農業研究会幹部 初等2年 芳村夏奈(長野県大町岳陽高等学校出身)
農業研究会の持つ「教育力」
2018年3月から始まった農業研究会の活動。収穫することができた稲や野菜もありましたが、うまく育たなかった野菜もありました。しかし、その失敗の中で、どうしてダメだったのか何がいけなかったのかを実感を伴って学ぶことができました。
収穫が終わり、収穫祭が終わり、農業研究会の活動は終わりのように見えますが、ここからがスタートです。
今回は、1年間この土地で学ばせてもらった感謝の気持ちと、来年度より良い学びができるように、土づくりという作業を行いました。土づくりとは稲や野菜を育てたことによって栄養が失われてしまった土に稲わらや稲株を空気を入れながら耕すことによってバクテリアや細菌類が有機物である稲わらなどを分解し、無機物になることによってそれが肥料となり、土の栄養を蓄える次の活動につながるとても大切な作業です。
今年度は、「土」にこだわりを持って、活動を稲作活動では行ってきました。土を耕すところから、柔らかくしたり、混ぜたり、機械でできる所も手ですべて行い、土を育ててきました。そこから学んだこととして、時間をかけていけば、たとえ手で行ったとしても、最低限のものはできます。しかし、土のことを良く知って、試行錯誤しながら行っていかないとより良いものはできないと思いました。対象を知って対象に合わせた世話をする大切さを学びました。
1年生からは今回の活動を通して、慣れた手つきで土を鍬で耕す先輩の姿を見て、自分ももっとうまく使えるようになりたいという声や、来年度、田んぼで稲を育てるすべての作業に立ち会いたい、田植えの時に使う稲がどのように成長していくのかまでを観察したい、どうしてカス米(実がぎしっりと詰まっていないお米)が生まれてしまうのか、など来年度の活動に対して熱意のある声が聞こえてきて、とてもうれしく思いました。来年の活動がどうなるのか今から楽しみである共に、3年生として、この1年間経験してきたものを生かして、後輩の活動を全力で支えていきたいと思いました。
私がこの一年間で力を入れた活動は代掻きという作業です。代掻きという作業は、手で行うことが私たちにとって想像がつかない作業で、何が正解なのか、うまくいくのかなどたくさんの不安がありました。作業自体も長い時間下向きのしゃがめない体勢で活動をして体は限界でした。しかし、足で感じる土が柔らかくなる感覚やこの苦労が何か月先の収穫につながった喜びがありました。成功する確信がもてない中、だからこそ個人として・チームとして調べ、試行錯誤しながら活動し、努力し、対象に向き合うことができました。この活動経験から教育者として「やってみたい。でも自信がもてない」子どもの学び・成長のために背中を押してあげられる教師になりたいという教育観が芽生えています。
来年度、農業研究会の活動を行っていく後輩たちには、私たちが学んだことを土台とし、一人一人が活動の様々なところに価値や学びを見出し、皆で協力しながら、今年以上の学びの深い活動になることを願っています。
農業研究会 稲作会長 五十右