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第17回「わたしの住まいリフォーム・デザイン案コンテスト2025」表彰式&入選作品と審査評の発表

10月11日に、第17回「わたしの住まいリフォーム・デザイン案コンテスト2025」の本学にて表彰式を行いました。

遠方からも多くの方に出席いただきました。ありがとうございました。

表彰式後には、作品の中だけでは表現しきれなかった内容や制作上の苦労話もお聞きすることが出来ました。また他の受賞者の作品を見て、互いに良い刺激になっていました。

入賞者・入選作品と審査評をご紹介いたします。(各賞内順不同)

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建築士会賞:亀岡夫婦と噂の別宅(A技術・デザイン部門)  

大條 莉音(福島県立福島工業高等学校) 

この作品はストーリーにもある通り、作者の住む福島県・伊達地方の明治の頃、養蚕業で成功した亀岡家夫婦の現役引退後の生活を想像しながら組み立てられた作品です。
ストーリーと設計主旨は、平易で端的な文章に纏められ、見る人の想像力を刺激します。養蚕業に関わりの深い「桑の実」を手掛かりに、「土地の恵みを活かし、人に喜びを与える」をテーマに町屋をリノベーション、食事も提供するジャム工房を営む設定になっています。
図面のレイアウトは好感の持てるもので、特に限定された色での各部の表現はレベルの高さを感じさせ、タイトルの「~噂の別宅」と併せ、見る人を素直に引き込む良い作品です。

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優秀賞:Root.-小さな食卓のはじまり-(A技術・デザイン部門)

坂井 希優(岐阜県立岐阜工業高等学校)

小さな食卓を「中心」に、伝統、家族、子供と高齢者などの様々な問題について物語る素晴らしいコンセプトであり、その空間表現も非常に分かりやすくまとまっています。
高齢者夫婦の生活空間を二階に、一階には夫婦が経営する「子ども食堂」が配置されています。子供と地域が繋がるポカポカテーブルを持つ「子ども食堂」は計画・デザインを通じて、高齢者、地域社会、子供、家族団らんなど将来にあるべき生活文化の在り方を示そうとした試みが見て取れます。現実の生活に存在する社会的問題を解決しようとしたデザイン姿勢を高く評価します。

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優秀賞:知る空間~ダイニングバー「ウナギの寝床」~(A技術・デザイン部門)

田中 架羽(愛知県立愛知総合工科高等学校)

「知る」には、大きく二つの意味があり、一つは町屋の建物の魅力を知る、もう一つはこのダイニングバーでかかわる"人"を知る。地域の文化や町屋の希少性を考慮し、「知る」ことの価値を空間に落とし込もうとする試みは、単なる飲食空間に留まらず、交流や学びの場としての可能性を感じさせます。プランはとてもシンプルながら、町屋特有の通り庭や大きな梁、格子といった要素を丁寧に残し、ダイニングバーとして再生させようとする姿勢が評価できます。ここで住まいながら働く夫婦のタイムスケジュールも考えられており、生活の様子がよく分かりました。このようなダイニングバーが存在することが容易に想像できます。

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優秀賞:森と夜空(Bアイデア・デザイン部門)

浅井 夏葵(聖マリア女学院高等学校)

まず手描きパースの画力が素晴らしく目を奪われました。テーマである異世界の雰囲気漂うデザインの部屋が独特のタッチで描かれており、そのままアニメの原画になりそうです。全体の雰囲気だけでなく、壁、床、天井の素材感やカーペット、カーテン、照明器具から、たくさんの小物に至るまで細部にこだわっていることが伝わる表現力が素晴らしい。
A3という小さな紙面ですが、本当に異世界の物語に思いを馳せることが好き、この部屋だったら他のことを投げ捨てて帰りたくなる、という気持ちが伝わってくる迫力ある作品に仕上がっています。
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優秀賞:時間を変える(Bアイデア・デザイン部門)

國弘 詩織(早鞆高等学校)

この作品は「帰りたくなる部屋」をテーマに、自己実現の「理想の部屋」を考案しようとしたものです。部屋は単なる「寝る」、「勉強する」ための部屋だけでなく、自分らしく落ち着ける「場所」でもあるべきだというアイディアは素晴らしい発想です。このようなコンセプトに基づいて、「休息」、「気分転換」、「快適性」、「採光」、「ペット」というキーワードを取り入れたシンプルで分かりやすい計画になっています。
「時間を変える」ということは、「理想を実現」することでしょうか。もう少しタイトルとの関連性が明確になるとなおよいでしょう。
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優秀賞:猫と過ごす秘密基地(Bアイデア・デザイン部門)

藤塚 琉衣(岐阜県立羽島北高等学校)

猫好きであればまさしく一目散に帰りたくなるであろう部屋になっています。猫と人が共に心地よく過ごせる空間を秘密基地のように仕立てたユニークな提案です。キャットウォークや造作棚を活かした立体的な構成は、猫にとっての遊び場であると同時に、飼い主にとっても眺めて楽しめる空間です。また、勉強スペースでは集中して取り組めるような実用性もしっかりと考えられ、ペットとの共生、癒しと実用性のバランスが取れていると思います。アイソメ図での表現も分かりやすく、「帰りたくなる理由」を感覚的に伝えることに成功している、温かみと遊び心にあふれた提案です。 6.jpg

奨励賞:灯-Tomoshibi-
~静かに灯る、和と現代のくつろぎ空間~(A技術・デザイン部門)

岩下 桃花・大久保 美空・鈴木 愛佳・鈴木 萌花(国立小山工業高等専門学校)

灯りをキーワードとした住居兼バーをデザインした作品です。昼と夜と異なる「灯」によってさまざまな建物の表情がみられるのはとても素敵だと思います。道路から一歩「引いた」入口には、やわらかな明かりが灯り、人をやさしく誘い込むようなデザインの工夫がうかがえます。開かれた中庭はバーの雰囲気をより盛り上げてくれそうです。バーが中心に考えられているため、難しい部分もあるかもしれませんが、居住部分はもう少し居住者に寄り添ったプランになるとなおよいでしょう。全体の紙面構成が大胆で、パースで空間のよい雰囲気が表現されており、とても目を引きました。

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奨励賞:匠の箱(A技術・デザイン部門)

小塩 優衣(静岡県立科学技術高等学校)

町家を「くら」「いえ」「たな」「ばしょ」「くうかん」「みせ」という多様な役割をもった「箱」としてとらえ、あえてあまり大きな手を加えずに伝統工芸職人のアトリエ兼住まいとして発展的保存を図ろうとする作品です。
職住共存の建物としての町家の本質的価値を継承しながら、職と住のゾーニングを見直し、なおかつ他人である住人同士の関係を室配置で分かりやすく表現できています。シンプルなコンセプトをシンプルな図面と断面パースなどで表現しており、とても分かりやすくまとまっています。

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奨励賞:海で溺れている人は浮き輪で救う!
人生で溺れているひとはドーナツで(A技術・デザイン部門)

川原 桜來・坂本 唯斗・松村 青空(群馬県立前橋工業高等学校)

 

何ともユニークなタイトルとイラストで思わず手に取ってしまいます。手に取って見てみると、ドーナツで人生に疲れている人や助けを求めている人を救うというコンセプトに驚きとともに笑みがこぼれます。きっとこのドーナツ店は今の時代に流行りそう、そう感じます。
1階の店舗のレイアウトもキッチンの配置に工夫して、テイクアウトとイートインをうまくさばけるようにしています。店の内外に飾られた浮き輪もミスマッチのようで意外と和傘のように町家のたたずまいにマッチするのかもしれません。実現させてみたいと思わせる楽しくも現実感ある作品です。

 

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奨励賞:回帰~太鼓が呼び戻すまちの鼓動~(A技術・デザイン部門)

増田 ゆずな(静岡県立浜松工業高等学校)

今では使われなくなった町屋を『大改造』して「和太鼓」を中心に据えた住まいを造り、そこから発生する熱量で、若者たちを呼び込もうするパワー溢れる作品です。まず図面の満開の桜に惹かれ、断面パースの普通では有りえない屋根形状に興味を持ちました。通常、町屋の奥にある庭が位置を替え、重要な機能を持った中庭に生まれ変わる発想は素晴らしく、屋根の形状変更と併せて力強い提案になっています。説明文とダイアグラムによってその全体像がやっと理解できる大胆な提案で、細部については今後越えなければならないハードルもありますが、それらを凌駕する「若さに満ちた」素晴らしい作品です。 10.jpg

奨励賞:本と自然の癒しを求めて(A技術・デザイン部門)

吉村 美柚(静岡県立浜松工業高等学校)

町屋本来の考え方である通り沿いに面した"みせ"をあえて通りから奥まった場所へ持ってくる発想は独自性があります。誰もが来やすい場所というより、知る人ぞ知るブックカフェという存在になり、居心地の良さを生み出す気がします。奥にブックカフェを設けることで、庭とうまく繋げ、カフェの一部としての利用が可能になっています。自然の癒しを享受し、藤棚の下で落ち着いて本と向き合える空間をつくり出すと同時に、ゆったりと時間が流れるような雰囲気を演出しています。断面パースや利用イメージのスケッチも丁寧で、訪れる人がくつろぐ様子が具体的に想像できます。

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奨励賞:洋と和が交差する空間(Bアイデア・デザイン部門)

臼井 千晴(屋久島おおぞら高等学校)

伝統的な和室など和の要素が失われていく日本において、あえて和の要素を洋室に採り入れることで使いやすく、リラックスできる部屋にリフォームしようと試みた作品です。特に畳や建具における和の素材により、暮らす人の五感を通してリラックスできるようにと考えられています。
畳にビーズクッション、開口部や照明器具に障子といった組み合わせは現代の商業空間などでもよく目にするようになっていますね。畳や和紙の使い方にもう少し突っ込んだ提案があるとさらに良かったですね。
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奨励賞:開放感と癒しの部屋(Bアイデア・デザイン部門)

大前 實洋翔(箕面自由学園高等学校)

作者の考えるリフォーム計画のテーマに沿った、素直で大変解りやすく纏められた作品になっています。開放感と癒しを獲得・実現させるために、6つの提案があります。大きくは2部屋間の間仕壁を無くし、外壁側に大きな2つの窓設け、開放的なワンルームをつくり出しています。部屋の隅に寄っていたキッチンを、部屋の中央寄りに移動させ、何時でも家族の気配を感じられるスペースとして、機能するように考慮されています。インテリア的には 畳部屋をなくしプロジェクターを設置、床材も茶色から明るい肌色で統一し、天井には梁を設け開放感を強調しています。全体として無理が無く、現実味のある良い作品です。

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奨励賞:帰りたくなる部屋~温かみあるほっこりRoom~(Bアイデア・デザイン部門)

渡辺 夢叶(愛知県立南陽高等学校)

この作品は「帰りたくなる部屋」というテーマを「温かみあるマイルーム」として明快に示し、自然素材や温かみのある色彩を取り入れた癒しの空間を描き出しています。BeforeとAfterを対比させることで、空間の変化が一目で理解でき、家具やカーテン、照明や小物などのインテリアエレメントが統一感をもって演出されている点が魅力的です。特に緑や木目を基調とした配色は、自然とのつながりを感じさせ、帰宅時に心を落ち着かせる効果をもたらしています。全体を通して、安心感と温かみを兼ね備え、「自分だけの居場所」としての特別感を持つとても現実的なリフォーム案に仕上がっています。 14.jpg

学校賞:静岡県立浜松工業高等学校

受賞された皆さん、おめでとうございます!